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2019/01/29

【イベントレポート】暮らしと仕事-女性の多様な暮らしを支えられる地域へ-

  • お知らせ

 

 北海道大学COI「食と健康の達人」拠点シンポジウム、テーマは「暮らしと仕事」。
 結婚するしない、子どもを産む産まない、仕事はどうする? 
 女性には多様な道があり、そこに正解はありません。
 女性にとって幸せな道とは何か?
 そしてその道を支えられる地域や企業の役割とは何か?
 さまざまな立場の女性を中心に、問題を提起し一緒に考えました。

 

 

 

 

満を持しての開催

昨年9月に実施予定だった本シンポジウムですが、北海道胆振東部地震で一旦延期となり、
この度、満を持しての開催となりました。

当日は、北海道らしく吹雪。道路の渋滞が見られましたが、心配していた飛行機の運休や大幅な遅れはなく、無事に東京からの登壇者、参加者も到着。会場には女性だけではなく、企業や自治体、官公庁などにお勤めのスーツ姿の男性も多く見られ、男性からの関心の深さも伺えました。

いよいよスタートです

まずは全体司会の北里大学 関根麻里子さんが登場し、和やかに開会。主催者代表として、北海道大学COI「食と健康の達人拠点」プロジェクトリーダー吉野正則が「一度きりのイベントではなく定期的に今回のような企画を実施し、女性の協議会をつくっていきたい」と述べました。そしていよいよ、最初の基調講演です。

基調講演「健康経営における女性の健康」 
経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課 係長 紺野春菜さん

紺野さんからは、「健康経営における女性の健康」というテーマで、まず、「健康経営」についての説明。従業員の健康管理を経営的な視点で考え、健康投資をしていくことで活力向上につながり、業績向上をもたらすというものです。しかし、紺野さんによると、企業における健康づくりはメタボ対策が中心で、健康経営は主に男性のためになっているのではないか?例えば月経痛や受動喫煙など女性特有の健康課題について考え、女性の健康についての取り組みを強化する必要性が見直されているそうです。 では、女性の健康を考えた健康経営の基礎的な土台となるのは?というと、まず重要なのは、リテラシーの向上。リテラシーが高い人ほどパフォーマンスが高いということで、まずは知ることの重要性。そして、メンタルヘルスに関して女性は口に出せない悩みも多く、相談窓口の設置やワークバランスの推進、働きやすい環境づくりなどを挙げ、経済産業省として女性の健康についてどのように考えているかを示されました。確かに、例えば、妊娠した場合を考えてみても、楽な仕事に配置されることが本当に女性のためになるのか?と、時代の変化の中、企業としても視点の転換を迫られているのかもしれません。

「妊娠期、そしてそれ以前から大切にしたいこと 岩見沢母子健康調査」 
北海道大学大学院医学研究院 玉腰暁子さん

紺野さんに続いての講演は、北大の玉腰先生。「人間の生命の出発はいつでしょう?」という問いからスタート。玉腰先生いわく、いろいろな考え方があるとしながら、「お腹にいる時より、もっと前から考えたい」。環境省のエコチル調査は、環境汚染や変化などの環境リスクが人に悪影響を及ぼす可能性を調べるもの。お母さんのお腹にいる時から13歳までの対象者をコホート調査しています。例えば、母親の喫煙が与える影響は子どもたちにどれくらいあるのか?そして、現在、玉腰先生をはじめとする北大COIで取り組んでいるのが、岩見沢市の母親と子どもの調査。家族健康手帳というアプリを使ったり、血液の採取や面談から情報を収集し母子の健康を調べています。母親になるために大切なこと、それは、妊娠してからではなく、もっと若い頃から女性の体をどのようにつくっていくのか?玉腰先生が問題提起されました。

「うんちからわかる!? わたしの未来」 
北海道大学大学院先端生命科学研究院  綾部時芳さん

続いての講演は、腸内環境の権威、綾部先生。私たちの腸内に住む莫大な数の腸内細菌がつくる生態系、「腸内細菌叢」の異常がさまざまな病気、例えばクローン病、うつ病、肝がん、アトピー、自閉症などと関係すると綾部先生が言います。腸内細菌叢を正常に保っていくことが大事とのこと。腸内細菌叢をうんちから調べると、その人の現在過去未来がわかると言います。人の腸の70%が水で、その残りの部分の40%が腸内細菌。母親の腸内細菌は子どもに移行するそうなので、ここで生まれてからの歴史がわかります。そして30%が超上皮細胞。これからは数日前の自分が何を食べたかがわかるということ。さらに残りの30%は、食べたものの残滓。何を食べてきたのかの未来への自己責任が問われるというわけです。うんちと健康の関わりを考えると、特に出産を担う女性は、腸内環境に無関心ではいられなさそうです。

「日本で育った!かんぽうとわたし」 
北里大学東洋医学総合研究所 石毛達也さん

続いて登壇された石毛先生からは、漢方のお話。漢方外来の男女比は1:2だそうで、30代前半〜50歳の女性が特に多いのだそうです。冷え性や自律神経失調症など、女性は体と精神的の不調体を起こしやすい。石毛先生からは漢方ドッグの紹介がありました。脈診、舌診、腹診などの漢方特有の診察方法から『未病』の状態かどうかを漢方の概念を、ものさしとして総合的に診断するのが漢方ドッグ。漢方ドッグで自分の体質を知り、自分で体調コントロールをしていくことが可能とのこと。漢方に興味があるものの、どこに行けばいいのかわからないという女性も多いはず。自分に合うものを探すのは難しいので、漢方の医療機関にぜひ受診してみてほしいと締めくくりました。

「日の当たる朝で素敵な1日を」 
北海道大学大学院教育学研究院 山仲勇二郎さん

生物時計の仕組みを研究している山仲先生、登山好きの母親から研究のヒントをもらったと言います。登山をしている人が元気な理由を調べてみようと。中高年の登山している方に心電図の計測装置をつけ、自律神経の日内変動を調べるという調査をしたところ、登山日は夜間睡眠時の副交感神経が活発になるという結果がでました。運動と人の生物時計の関係に注目し研究を深めたそうです。人には生物時計と環境時計のほかに社会時計に影響を受けていますが、私たちが活動し体内を調整しているのは主に生物時計。生物時計を調節するもっとも強力な因子が太陽光ということで、一日のうちで光を浴びることの重要性を話されました。日常のささいなことに気をつけるだけでも人生は変わる。朝はしっかりと光をあびましょう!

TALK SESSION1「自分を幸せにするとは?-人生を支えるリテラシー-」

トークセッションの一つ目は、株式会社ライフサカス代表取締役の西部沙緒里さんと株式会社サツドラホールディングスCDOの萩原学さんをゲストに迎え、お話いただきました。 西部さんからは、病気や不妊という困難な局面に際して、自分を支えてくれたヘルスリテラシーの重要性についてのお話。当たり前にあると思っていた未来がいきなり閉ざされたと感じた乳がんと不妊宣告。そんな経験を持つ仲間とつくったのが「ライフサカス」という会社だそう。女性が自分たちの体についてよく知り、どう生きていきたいかを考えることをサポートしています。「いくら迷ってもいいじゃない。人はいつだって必要なプロセスを生きている」という言葉に、会場は強く勇気づけられました。  また、萩原さんは神戸出身で、すでにお子さんがいた奥様と結婚し、二人の間にもお嬢さんが生まれ、現在は4人で北海道生活を満喫しています。とても柔軟な生き方をされている萩原さんですが、そのベースには、89歳になる今もピアノの先生としてお仕事をされる祖母の姿があるそう。女性も当たり前に仕事をする家庭に育ったのだそうです。萩原さんいわく、どちらかというと男性のほうが男性の固定観念に縛られることが多いのではないかと。確かに、「男なんだから!」とはよく聞く言葉ですが、萩原さんの家庭も西部さんの家庭も、男だから女だからはありません。家事や育児の分担は特にせず、やれるほうがやるというスタンスで、チームとして家庭を築いていくことを自然に実践しているのだそう。家族会議を頻繁にして不満がたまらないようにしているという工夫も紹介されました。 男女だけではなく、世代間の格差も感じることが多いが、そこは、思い切って若い世代や女性に任せるという柔軟な姿勢も必要だとお二人からありました。何よりも大事なことは、人はそれぞれ違うと認識し、パートナーや他の人を尊敬尊重すること。これこそが、人生を幸せにするリテラシーの一つではないか。西部さんと萩原さんのお話におおいに納得です。

TALK SESSION2「女性の本音とは?」

トークセッション2は、さまざまな立場の女性が、本音を語り合いました。 一流企業でバリバリお勤めの女性3名とキャリアを積んで今は専業主婦という女性1名と学生1名合計4名が、サッポロビール株式会社の清水周子さんの進行で「不満」の本音を吐露。 大手流通にお勤めの渕上玲子さんは、「オンオフの時間を会社全体でつくろうとするとなかなか大変」と悩みが打ち明けられました。 そして対馬貴子さんは大手電力会社という男性社会で働いていますが、母親の描く理想の娘像にかけ離れてしまったことが悩みと言います。「母のためではなく自分が納得できる人生をおくりたい」という対馬さんですが、「母子はもっとも理解しあえない関係だけど少しは説明したほうがいいかもしれないですね」という、清水さんから人生の先輩としてのアドバイスもありました。 大手メーカーでキャリアを積んできた和田肖子さんは現在専業主婦。元来、猪突猛進型の性格で、ライフとワークのバランスをとることができず、子供がほしいと思って退職を選びました。そのことで夫婦お互いに不満が募ったのが悩みですが、「家族がふえたことで、お互い責任をもちあうことを感じるようになった」とのこと。猫をかすがいにして話すことで、わかり合えるように努力しているとのことで、会場に優しい笑顔が広がりました。 そして栗原莉奈さんは卒論に追われる学生さん。現在交際中の彼がいるそうですが、周囲からの結婚に関するネガティブな情報「子供がいて離婚したらもめるよ」などの一言に心がもやもやするそうです。 清水さんから、価値観はそれぞれ違い、それぞれの年代の女性の人生プランもそれぞれあっていいと思うという言葉に、女性の生き方の多様化を感じ一同深く頷きました。幸せの形はいろいろだし今年と来年は違う。幸せの形をみすえて、働き方や生き方をかえていく女性のたくましさを感じたトークセッションでした。

TALK SESSION3「幸せはどこからくるの?-幸せを感じる社会とは-」

最後のトークセッションは、恵庭でカフェを経営する20代女子、水野莉穂さんと、札幌の専業主婦 矢吹れい子さん、岩見沢で農業に従事する柳谷すみれさんをゲストに迎えました。 「どんな時に幸せですか?」という問いに柳谷さんは、「子供と一緒に農作物を収穫する時、農園で服や顔が汚れたまま、おいしい!と言う笑顔が幸せ」とのこと。また、水野さんが経営する喫茶店では、常連さんが、まるで自宅の居間のように「ただいま」と入ってくるのだそう。人が集まる時に「なんて幸せなのだろう」と感じるとのことです。 そして特別支援学級に通う息子のお母さん、矢吹さんは、息子がゲレンデをスキーで滑って降りてくる姿に、子供の成長を感じ母としての幸せを実感したそう。母として、女性として、そのときどきで幸せが変わって、日常は幸せいっぱいと言います。3名の幸せトークで会場があたたかい空気に包まれました。 その後、オランダに在住している吉田和充さんからのビデオレターが紹介されました。吉田さんは長年勤めた大手代理店を辞め、家族でオランダに2016年に移住。「世界一子どもが幸せな国」と言われるオランダで子育てをしてみたいと思ったからだそうです。 オランダでは社会の中心になっているのは子ども。ワークシェアや在宅ワークが進んでいて、様々な働き方がある社会。オランダの子育て文化としては、「子どもの幸せはママの幸せ」。そのために社会のしくみを考えようというベクトルなのだそうです。日本では、地域として幸せをささえるしくみは、まだまだこれからの印象。それぞれの幸せを実現するため、地域社会や企業が変わっていき、自分たちも参加し成長していく。そんな社会の実現を目指していけるのではないかと期待を持ちました。

 

クライマックス!

いよいよクライマックス。雪は小降りになったものの、17時半をまわり、外はもう暗くなっています。

基調講演「北海道の活性化、そのキーワードは“自分らしく活き活きと”」
株式会社クリエイティブオフィスキュー 代表取締役 伊藤亜由美さん

最後の基調講演は、株式会社クリエイティブオフィスキュー代表取締役伊藤亜由美さん。創業27年を迎えた北海道の芸能事務所の草分け的存在、クリエイティブオフィスキューの原点を語りました。北海道の素晴らしさをどう伝え、どのように活用していくか? 北海道で地道に活動を続け、2004年ついに東京進出。外から北海道をみる機会が増え、伊藤さんは再認識しました。「北海道は素晴らしい!」中でもコンテンツいしやすいのは「食」だと。 あらためて北海道の美味しい食を次の世代のこどもたちに伝えることは、東京のプロダクションにはできないことだと思ったのだそうです。北海道にしかできないコンテンツを作りたい!そう思い、農業のすばらしさを伝えるテレビ番組を制作しました。 また、北海道の素晴らしさ満載のある雑誌から影響を受け、地域に生きる人のすばらしさを伝え、北海道が元気になるような映像コンテンツをつくりたい、と制作したのが、大泉洋さんと原田知世さん主演の映画『幸せのパン』でした。月浦の洞爺湖をみわたせる月浦ワインのぶどう畑を舞台に、美しく優しさあふれる作品になりました。 その後は空知ワインの映画「ぶどうの涙」を制作。この時に北海道の農を熟知する塚田宏幸さんが食材コーディネートで参加、新作の「そらのレストラン」でもフードアドバイザーを務められました。瀬棚町を舞台にした「そらのレストラン」は間もなく公開、北海道の素晴らしさがいっぱいだそうです。 会社名の「キュー」はきっかけ。 その土地が持っているものにきっかけはあります。いかに自分が新しいものをそこに見つけて作っていけるのか?いつもそんな想いでいるそうです。 「北海道を元気にしていきたい。」 伊藤社長の熱いメッセージが会場を包みました。 女性に関わらず、人が生きていく上での幸せは、誰かを元気にすること。 感動的なフィナーレを飾る基調講演でした。

 

最後に閉会の挨拶

北大プロジェクトリーダー吉野さんから、出会いの大事さのお話がありました。この先も、続く女性の幸せ、そして男性の幸せ。生きていく人の幸せ。この出会いがどうかそれぞれの胸に幸せとして刻まれますように。 会場の皆さんそれぞれが同じ思いを共有できた時間でした。